Prince - Musicology | NOTRE MUSIQUE

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Elle est retrouvee.
Quoi? - L'Eternitee.
C'est la mer alleee
Avec le soleil.

Prince去年2004年にリリースされたプリンスの最新作。
前作の"n・e・w・s"では初のインストアルバムで、プリンス流のジャジーなファンクを披露し、改めてそのインストルメンタル全般に渡る才能を見せ付けたプリンスであるが、再びポップな路線に復帰したのが本作である。駄作なしで多作の天才、現代のデューク・エリントンともいえるプリンスではあるが、その才能が全開だったのはやはり80年代ということになるだろう。パープル・レインなどの一連の大ヒット作などはバブル経済期の日本でも大量消費され、プリンスの金切り声のようなシャウトはあの頃の飽和状態の高度資本主義をシンボライズしていたとさえいえる。
そんなプリンスも改名騒動を起こした90年代を経過し、プライベートでは結婚と離婚を経験する。その結果リリースされたのが前作のインストアルバムで、コンテンポラリーなネプチューンズらがヒットチャートで堂々と革新的かつ実験的な音楽を展開させる一方で天才プリンスの発表した音楽はひとり多重録音とはいえ、ただのプリンス自身の生身の演奏であった。そうしたプリンスの活動は時代の流れの逆をいくものであり、時代を象徴し、常にブラックミュージックシーンに衝撃を与え続けたプリンスの姿はもうそこにはなかった。
そしてリリースされたのが本作で、本作にはかつての黄金時代のプリンスが持っていた、ファンク、ゴスペル、ブルース、ロック、ジャズ、美しい泣きのバラード、スモーキーロビンソン直系のファルセットボイス、ジミヘン直系の激情的なギターソロ、プログレ風の複雑な展開を見せる大曲等、すべてが存在している。これはプリンスの現在のミュージック・シーンへの挑戦である。メイシオのサックスをフューチャーし、ファンキーなタイトル曲"Musicology"、誰が聞いてもすぐにわかるプリンスのシンセサウンドが美しい"Life 'o' The Party"、シルク&ヴェルヴェッツなファルセットと低音ボイスを駆使したプリンス流の歌唱を聴かせるバラードの"Call My Name"、縦ノリビートが懐かしささえ感じる"Cinnamon Girl"、スライ・ストーン風であり元祖ミネアポリスサウンドでもある"Dear Mr. Manなど、各曲のクオリティは非常に高い。リリース前にはすべてのレコードレーベルから同時発売するという案を打診しているなんて発表し相変わらずのお騒がせ振りを発揮。(結局Columbiaからリリース) "Musicology"というタイトルからも音楽に対するプリミティブで肯定的な欲求とプリンスの自信と本気度が伝わってくる。全体的にこれまで断片的に披露してきたプリンスの音楽的なエレメンツが集約されたサウンドであり、80年代の黄金時代を彷彿させるサウンドであるが、以前の"Emancipation"や"Rave Un2 The JOY Fantastic"と根本的に違うのは、それがあくまでもプリンスが計算的に意図的にやっているという点である。つまりプリンスは意識的に過去の栄光を自分の中でリバイバルさせて、過去の自分を演じている。天才ゆえにやろうと思えばどこまでも時代の先を行くことができる能力を持っていながら、現代のミュージックシーンの水準に合わせ、ど真ん中にストライクを投げてきた。結果として本作は大ヒット、Musicologyツアーは年間を通して観客動員数が全米No.1を記録している。
プリンスはこの作品で意識的にプリンスらしさを取り戻し、再び時代に向き合った。次作ではまたどんなサウンドを聴かせてくれるのかまだまだプリンスからは目が離せない。本作は現代の音楽に求められる大衆性、音楽的に豊潤なクオリティー、プリンス自身のアーティスティックなエゴのすべてがバランスよく結実し、早くも2000年代を代表する名盤となった。プリンスにとっても久々の改作である。