The Band - Music From The Big Pink | NOTRE MUSIQUE

NOTRE MUSIQUE

Elle est retrouvee.
Quoi? - L'Eternitee.
C'est la mer alleee
Avec le soleil.

The BandThe Bandの1968年のデビューアルバムであり、アメリカンロック史に輝く名盤。
デビュー当時はボブ・ディランのバックバンドという認知しかされていなかったが、このアルバム一枚で一気にアメリカを代表するロックバンドとなった。The Bandという人をバカにしたバンド名ももともと彼らの匿名性をアピールしたものであったが、今や完全に彼らの固有名詞となっている。メンバーはロビー・ロバートソン(G,Vo)、リチャード・マニュエル(P,Vo)、レヴォン・ヘルム(Ds,Vo)、リック・ダンゴ(B,Vo)、ガース・ハドソン(Org,Sax)の5人で、レヴォン・ヘルム以外はすべてカナダ人である。またこのアルバムのプロデューサー兼サイドマンのジョン・サイモンも彼らのサウンドをアーシーな方向へと導いた重要な人物である。
アルバムの内容はというと、やはりディランの影響が大きく、ディランの数多い名曲の中から"Tears Of Rage"、"This Wheel's On Fire"、"I Shall Be Released"の3曲をカバーしている。このディランとThe Bandとの関係については、ディランが彼らに詞を教え、The Bandが当時フォークの旗手であったディランにロックを教えたといわれているが、実は両者ともにブルース、カントリー、R&B、ゴスペルなどのロックンロールを生んだアメリカンルーツミュージックに十分過ぎるほど精通しており、この両者の音楽的邂逅は起こるべくして起こったといえるだろう。
The Bandのサウンドはカナダ人主体のバンドでありながらも、そうしたアメリカンミュージックのルーツに根ざしたものであり、アメリカ南部のオーガニックな匂いがたっぷり染み付いた音楽である。特にメンバー全員によるソウルフルでゴスペルフィーリング豊かなボーカルや、ロバートソンの荒削りでワイルドなギターやゴスペルそのものの響きを持つガース・ハドソンの重厚なオルガンの音色、そして白人のロックバンドでありながら、本場のR&Bにも通じるタフなビート感が彼らのサウンドを決定的なものにしている。アメリカンルーツミュージックそのものともいえるロックであり、バンド名同様にそのサウンドは極めて匿名性が高く、また同時に質の高いものであった。伝統的な音楽でありながらも、これまでのロックには決して存在しなかったサウンドで、当時カウンターカルチャー、ヒッピー・ムーヴメントの吹き荒れる中、サイケデリックロックが主流のロックシーンに大きな衝撃を与えた。このThe Bandの伝統を重んじるサウンドは当時のそうした陽気なロックに対する警告にも聴こえ、楽天的になっていくロックサウンドに大きな疑問を投げかけた。
The Bandのサウンドは、カナダ人によるアメリカンミュージックの再確認である。所詮は"よそ者"である彼らが当時アメリカのポップシーンの深いところに眠っていたルーツ音楽を意識的に表現してみせたという点では非常にポストモダンともいえるサウンドで、古臭い音楽をベースにし妙な安心感を与えながらも極めて刺激的という2面性を持った素晴らしい音楽であった。また彼らの"よそ者"としての感性は当時アメリカ社会からドロップアウトしようとする若者の大きな支えにすらなった。今や多くのアーティストにカバーされている名曲"The Weight "に託されたメッセージ、伝統的な音楽の中に独自の音楽を築き上げた彼らのサウンドは今後も決して古くならない。そしてこの後のThe Bandはロビー・ロバートソンの色が強くなっていくため、各メンバーひとりひとりの個性がバランスよく発揮されたという点でも、このアルバムはThe Bandの代表作といえる。
なお、これまた有名な話ではあるが、ジャケットのあまり上手とは言えない絵はディランの手によるものである。